一戸建ての屋根材を交換するリフォームを、屋根の「葺き替え」(ふきかえ)工事と言います。
当ページでは、瓦から「金属屋根(ガルバニウム鋼板)」への葺き替え費用について、まずはご説明をさせて頂きまして、最後に「コロニアル屋根」「リッジウェイ」といった他の屋根材へ葺き替えた場合の費用と金額比較をご紹介させて頂きたいと思います。また、屋根を軽量化する事で耐震対策にもなりますので、その内容についても後ほど触れさせて頂きます。
屋根についてはメンテナンスを怠りますと、雨漏りの発生などから家の寿命が縮まります。木造住宅の骨組みである木材において、継続的な雨の侵入は木材を腐らせる大きな原因となってしまいます。
写真は「セメント瓦」という種類ですが、割れやすい屋根材でして、それが雨漏りの原因となります。実際にこちらのご自宅では、瓦が割れてその隙間から雨が侵入し、割れ目の奥に見える木材に穴が空いてしまっている事が確認できます。
今後「割れ」が全体的に広がっていく事が予想されますが、セメント瓦自体が現在、基本的には生産されておりませんので、金属屋根などへの屋根葺き替え工事をご提案致します。
「金属屋根」については、耐久性・断熱性・軽量化などの性能面で、屋根材としては上位に位置しますので、コロニアルなどのスレート屋根と比較しますとリフォーム費用は割高になります。ただし、スレート屋根が10年程度で定期的なメンテナンスが必要な上に、それでも寿命が20-30年程度という性能に対して、金属屋根は30年程度はメンテナンスフリーという商品が多い屋根材となります。
初期費用が割高であっても、中長期で考えた場合にコストがかからない点を含めて検討頂ける屋根材となります。
屋根葺き替え工事の費用算出の為の建物情報
今回、瓦屋根から金属屋根への葺き替え費用算出にあたり、まずは建物の情報を仮定させて頂きたいと思います。ここではシンプルな造りの建物を設定させて頂きます。
【建物設定】
・屋根材:セメント瓦
・屋根形状:切妻屋根(上記写真の様に2つの傾斜面からなる屋根)
・木造2階建て
・総二階(1階と2階が同じ形状・同じ面積で、1階には屋根がない造り)
・家の間取りは、幅3間(5.46m)×奥行4間(7.28m)
・屋根の傾斜は4寸勾配(角度で言うと約22度)
■ 屋根面積の算出方法
屋根工事の費用を算出する上で、屋根面積は費用に大きく影響しますので重要です。
前出の建物データをもとに、まずは家の平面の広さを算出してみます。
「2階天井の面積」
「家の幅」×「家の奥行」
=3間(5.46m)×4間(7.28m)
=約40㎡
となります。
上記をベースに屋根の面積を計算していきたいと思います。
①屋根は建物よりも「軒」が出ている為、左右の出幅を加算します。
②屋根は勾配がありますので、その勾配に合わせた面積増加率を掛け算します。
そうしますと、
「屋根面積」は次の様に算出できます。
(「家の幅」+「軒の出幅」)×「家の奥行」×「屋根勾配 (切妻4寸勾配)」
={3間(5.46m)+3尺(0.91m)}×4間(7.28m)×1.077倍
=約50㎡
となります。
屋根葺き替え工事の内容や名称
葺き替え工事に必要な工程について、まずは理解を深めるために項目ごとの内容を解説させて頂きます。
▶ 足場代+養生シート
セメント瓦や陶器瓦などは、4寸勾配以上、角度で言いますと22°以上の傾斜がある為、屋根工事の職人さんの安全を確保する為にも足場の設置が必要となります。また、養生シートで覆う事で、近隣住宅へ解体時のホコリの飛散防止にもなります。傾斜がより急な屋根の場合は「屋根足場」が必要となるケースもあります。
▶ 屋根解体+処分費用
瓦はもちろんの事、その下にある「瓦桟」という木材や「ルーフィング」という防水シートも撤去処分します。近年、環境問題の背景から廃棄物処分の費用は上昇傾向にあります。
▶ 下地木工事
屋根を解体しましたら、野地板と呼ばれる木材を屋根面に上張りしていきます。新しく金属屋根を設置していく為の下地となる木材です。
▶ ルーフィング
野地板の上にルーフィングと呼ばれる防水シートを張っていきます。屋根を被せる事でルーフィングは見えなくなってしまいますが、雨の侵入を防ぐ最後の砦が防水シートですので、大事な役割を担います。金属屋根の場合は、ゴムアス系のルーフィングを使用します。
▶ 金属屋根葺き
今回紹介する屋根材は「GLメッキ鋼板」または「ガルバニウム鋼板」と呼ばれる金属屋根です。アルミニウム・亜鉛・シリコンからなる一般的な「GLめっき鋼板(ガルバニウム鋼板)」や、「マグネシウム」を2%融合させてメッキの強度を向上させた上位の商品などもあります。塗膜の仕上げも一般的なポリエステル塗装だけでなく、上位のフッ素塗装などの商品もあります。また、ガルバニウム鋼板を更に錆びにくく開発した「エスジーエル鋼板」という種類の金属屋根もあります。これらの素材や塗料の組み合わせなどによって、各屋根メーカーごとに豊富なラインナップが用意されております。
▶ 袖役物
屋根材を並べた際の両端部分(けらば)を納める部材として袖役物が必要となります。
▶ 棟
屋根の面と面の頂点には、棟という最後に被せる部材があります。また、換気棟という換気機能を備えた棟もあります。
▶ 雪止め金具
屋根材の上にL字で設置する金具で、積雪の際に人やモノへの落雪を防ぐ部材です。
▶ 軒樋
屋根から流れてくる雨を受ける樋について、屋根材が瓦から金属屋根に変わる事で樋の位置についても調整が必要となります。軒樋自体の劣化状況やしっかりと位置を調整して雨水をしっかりと受ける為にも、基本的には交換をお勧めしております。
セメント瓦から金属屋根へ葺き替えるリフォーム費用
工事内容について前項でご確認頂きましたので、ここでは瓦から金属屋根への葺き替え工事費用について具体的に算出していきたいと思います。屋根面積は、上記で計算させて頂きました通り「50㎡」での概算算出となります。
・足場損料 150,000円
・養生費 50,000円
・既存屋根面解体工事(50㎡) 80,000円
・上記解体分廃棄処分(50㎥) 45,000円
・下地木工事(50㎡) 100,000円
・防水ルーフィング(50㎡) 105,000円
・金属屋根葺き(50㎡,ガルバニウム鋼板 ポリエステル塗装,断熱ルーフ,材工共) 450,000円
・袖役物 42,000円
・棟 20,000円
・棟換気(1箇所) 40,000円
・雪止め金具 40,000円
・軒樋交換(丸樋14m,集水器2箇所、吊金具交換) 7万円
以上に消費税を合わせまして、
合計131万円位となります。
■参考:1㎡あたりの金属屋根葺き替え費用
参考程度となりますが、ご自宅の屋根面積に応じて計算できる様に、屋根面積1㎡あたりの費用についても算出させて頂こうと思います。ただし、屋根面積では計算できない足場損料と養生費については、ここでは別途費用とさせて頂き、単価から除外させて頂きます。
{131万円-(足場損料+養生費 税込22万円)}÷50㎡=21,800円
となりますので、瓦から金属屋根(ガルバニウム鋼板)への葺き替えについては、
1㎡=約2万2,000円位となる予測です。
※足場は建物の階数や形状で変動しますので、屋根面積の1㎡からは除外しました。
※実際には屋根面積での算出ではない工事項目もありますので、あくまで目安としてご参考にして下さい。
※屋根面積が20坪以上(67㎡以上)の場合は、単価が下がる可能性があります。
※1階などに下屋根がある場合は、その分の面積も加えて計算が必要となります。
※上記は切妻屋根の場合となります。寄棟屋根や複雑な屋根形状の場合は、金額が変動(増加)する場合があります。屋根の形状によっては、この他にも部材が必要となるケースがあります。
金属屋根へ葺き替える耐震効果
屋根をセメント瓦から金属屋根へ葺き替える事で、屋根の軽量化が実現して建物の耐震性能が向上します。
屋根の重量としては、上記でご紹介しました「下地木工事(野地板)」の重量を加味して計算しましても、50㎡の場合で次の通りとなり、重さが3分の1以下に軽量化されます。
・セメント瓦+瓦残=約2.2t(約2200kg)
↓
・金属屋根+野地板=約0.6t(約600kg)
車で例えますと、軽自動車2台分相当の重さが屋根から無くなる計算となりますので、大きい地震の際は横揺れの揺れ幅が軽減される事が実証されております。
金属屋根以外への葺き替え工事の金額比較
金属屋根への葺き替え工事については、概算で
1㎡=約2万2,000円位となりましたが、その他の屋根材について葺き替え費用の比較紹介をさせて頂きます。
建物は同条件として、
■瓦から「コロニアル屋根」へ葺き替える費用
・(足場損料と養生費は除外)
・既存屋根面解体工事(50㎡) 80,000円
・上記解体分廃棄処分(50㎥) 45,000円
・下地木工事(50㎡) 100,000円
・防水ルーフィング(50㎡,アスファルトルーフィング) 30,000円
・コロニアル屋根葺き(50㎡,棟工事費用を含む) 300,000円
・棟換気(1箇所) 33,000円
・雪止め金具 30,000円
・軒樋交換(丸樋14m,集水器2箇所、吊金具交換) 70,000円
合計76万円位となります。
つまり、
1㎡=約1万5,000円位の単価予測となります。
■瓦から「リッジウェイ」へ葺き替える費用
リッジウェイ(旭ファイバーグラス)という屋根材への葺き替え工事の費用についてもご紹介させて頂きます。
デザインは建物との相性を選びますが、コロニアル屋根と比較してメンテナンス費用が安価の人気屋根材となります。コロニアル屋根と同額での工事が可能ですので、
1㎡=約1万5,000円位の単価予測となります。
以上をご参考にして頂きまして、屋根のリフォームについてご検討頂ければと思います。